閉じる効用について

突然、堅い話で申し訳ないが、やはり、インターネットやオープンソースの動きがもたらす市場性の変化とか、それが経済に与える影響とかが気になって仕方ない。それに関連して、ずーっと気になっている「独占」について頭を整理してみました。

企業にとって、独占のうまみは大きい。そのポジションがとれたおかげで利益率は格段に向上、経営指標のすべてが正のスパイラルに転換する。一方、市場の立場に立つと、独占により自由競争が阻害される。市場にとって独占は悪。独占禁止法で単に独占というもの禁止する(独占禁止法の立ち居地というのは、独占による違法行為を禁止するだけでなく、独占という状況それ自体を回避させるためにある)というのも、独占があまりに強大な力を持ってしまう所以。しつこいけれど、ゆえに、企業にとっては独占というものはとてもおいしいものである。

あたりまえじゃないかと言われるかもしれないけれど、独占市場を形成する必要条件として、閉ざされた市場を形成するということがある。市場を囲む明らかな境界線がある。言い換えれば、市場が無限大に開放されているところに独占は存在しない。独占のうまみを享受するには2つの要素が必要。ひとつは、市場のサイズ=大きければ大きいほどいい。もうひとつは、その市場を「閉じる」ことである。

私が、アメリカのビジネススクールを卒業した頃、今をときめくAppleは瀕死状態だった。1992年の入学時に Macを使い始めファンとなった私としては納得がゆかない。ハイテク産業といえども、明らかに技術だけが優位性を確立するわけではない。ビジネススクールのケースにもなった、AppleがOSを開放しなかったことによる競争劣位。それに比べて、MicrosoftはそのOSを数々のハードウェアメーカーに販売。異なるハードウェアの上にWindowsが載り、その上のアプリケーションの販売を容易にした。米国司法省がそこに噛み付いたのは記憶に新しい・・いや、古いかな・・。ハードウェアの上にOSという皮をかぶせることにより市場を閉じたのである。

別にハイテクでなくても同様なことがどの産業にも散見できる。例えば、アルコール市場で、ビールという市場は閉じていたが、発泡酒が発売され、境界線は不明確に、よって競争は次の段階に入り、それまでの寡占市場は混沌とした。もっと長い目で見れば、アルコール市場では、移ろいやすい人の心が閉じた境界線を不明瞭にしてきたといえる。ウイスキーやバーボンなど、かつては、バブル時代、市場のステータスであった酒類、今や焼酎に押されつつある。以前に比べ、境界線は、特定の種類の酒から酒全般に移行したと言える。そして、今後、健康志向が高まればアルコール市場は、ソフトドリンクやノンアルコールの飲料水と競争を始める運命かもしれない。

インターネットは、この閉じた市場をあらゆる意味で開放している。インターネット総明記、PCがTVと融合すると言われ始めた当時、アメリカで経営していた会社のお客様(日本のメーカー様)たちに熱い思いで話した覚えがある。デバイスの境界線がなくなる。Microsoftに勝てる。家庭でのハブの覇権争いが始まりそうだった。ハブになるのはTVかPCか、はたまた携帯かサーバーか。これが実現するまでにはまだ時間がかかりそうであるし、日本勢は今のところ全く王手をかけられていない。が、とにかく、PC市場は以前のような閉じ方はしていない。独占はゆるくゆるくなっている(インターネットが開放したものは、閉じていたデバイスの市場だけではないが、ここでは、独占についてだけ考えたいので、とりあえず、他の話題には触れない)。

同じインターネットでも、Googleが作り出している市場は閉じている。Googleは、OSの上にもう一枚インターネットという一皮をかぶせた。もちろん、インターネットは一企業に属するものではないが、Googleのエンジンの性能が他に比べて優秀である限り、膨大な情報を整理・検索しようとする人たちの市場をインターネットというツールで閉じていると言える。

そして、この市場のサイズは?とりあえずのところ、世界最大の広告代理店を目指すGoogleは、先のMicrosoftと異なり、インターネットを媒体としてとらえた広告サポートビジネスモデル=受益者非負担のビジネスモデルをコアにしている。この広告市場全体のサイズは50兆円、日本市場は6兆円、マスからターゲットメディアへの移行が進んでも市場規模に変わりがないとはよく言われることだが、長い目で見れば、広告市場全体のサイズも変わると私は考えている。インターネットビジネスは、市場の変換を促している。ビジネスモデルを受益者負担から非負担に、消費者を生産者に、購買者を販売者にという具合だ。新たな生産者や販売者が生まれれば彼らの一部は新たな広告主となる、また、受益者非負担のビジネスモデルの台頭により消費者は無償のサービスや製品を手に入れて利益を被るわけだが、消費者はそれにより余ったお金を貯蓄にまわすわけではない。他の有償のサービスや製品を購買する。生産者・販売者となることにより増えた収入がマクロ的な購買力を増やすとすれば、この市場は新たな広がりを見せる。Googleは、とりあえずのところ、成長市場を閉じていることになる。

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